食塩ならびに有機酸が,アルミニウム製調理器具から溶出するアルミニウム量に及ぼす影響について調べるため,食塩,酢酸およびクエン酸の種々濃度の混合溶液におけるアルミニウム溶出量をフレームレス原子吸光法により測定した。
1) プリンカップ,アルミニウム鍋,およびアルマイト鍋のいずれにおいても酢酸あるいはクエン酸と食塩が共存すると明らかなアルミニウム溶出速度の上昇が認められた。
2) 食塩のみの存在ではアルミニウム溶出は常温においては小さいが加熱により溶出が促進された。
3) アルマイト加工はアルミニウムの溶出を防ぐのに効果があるが,加熱調理に用いる場合には酸と食塩の存在下では溶出アルミニウムの明らかな増大が観測された。
4) 表面加工の施されていないアルミニウム製調理器具の加熱使用によりアルミニウムの溶出速度はおよそ数千倍に増大した。