医療政策は医療供給政策と医療保険政策に区分できる。医療供給政策では、厚生技宮と医師会からなる専門家政策コミュニティが1970年代に形成された。
本稿では地域医療計画に関わる三つの政策過程すなわち、1962年医療法改正による「公的病床規制」(ケースⅠ)、1972年廃案となった「医療基本法案」とその後の「実験的事業としての地域医療計画策定」(ケースⅡ)、1985年医療法改正による「地域医療計画と民間病床規制の導入」(ケースⅢ) を比較分析した。ケースⅡで厚生技官の台頭と専門家政策コミュニティの形成により、医療供給政策の政策過程が変容したことを明らかにした。
ケースⅡで、厚生技官の台頭と専門家政策コミュニティの形成により、地域医療計画が実験的事業として実施された背景には、保革伯仲状況と野党・健保連の対抗としての「医療社会化構想」があった。1985年医療法改正は、ケースⅡで形成された政策案(地域医療計画)の決定過程にすぎなかった。