人文地理
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研究ノート
ジオデモグラフィクスを用いた教育水準の学校間格差の評価―大阪市を事例として―
上杉 昌也矢野 桂司
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2018 年 70 巻 2 号 p. 253-271

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抄録

本稿は,都市内での教育水準の空間的不均衡とジオデモグラフィクスに基づく居住者特性との関係を明らかにし,近隣地区における社会経済的要因の影響を除いた教育水準の学校間格差について評価するものである。対象地域として社会経済的な居住分化が比較的明瞭で,2013年から「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の学校別の結果が公表されている大阪市を選んだ。全国学力テストの平均正答率を教育水準とみなすと,都市の空間構造に対応した教育水準の不均衡が存在し,近隣スケールにおいてもジオデモグラフィクスに基づく社会地区類型と通学先の学校の教育水準には一定の関係が見出された。また社会地区類型間で教育水準格差が存在することも示唆され,社会地区類型の差異により学校間の教育水準の変動の約半分が説明された。そのため学校の教育水準の評価においてはその学校の置かれた地域条件を考慮することが不可欠であるといえる。さらに,実際の学力テストに基づいて計測される教育水準からこの地域条件の影響を取り除いた実質的な学校効果は,教育水準が高い学校ほど大きいことも明らかになった。これらの知見は,ジオデモグラフィクスが地域間や社会集団間の教育格差を明らかにするだけでなく,空間的公正の観点からそれらの格差解消に向けた政策ターゲットの特定においても有用であることを示すものであるといえる。

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© 2018 一般社団法人 人文地理学会
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