抄録
目的:進行上顎洞癌に対する放射線同時併用動注化学療法におけるシスプラチン投与量と治療効果の関連性について統計学的に解析し,本治療法の有効性及びシスプラチン至適投与量を検討すること。
対象と方法:Stage III以上の上顎癌22例のうち動注を2コース以上施行した15例についてシスプラチン投与量により2群,すなわちlow-dose群は450mg/body以下(2001年から2003年,n=7,観察期間5~60ヶ月,中央値26ヶ月)と,high-dose群は600mg/body以上(2004年から2006年,n=8,観察期間10~32ヶ月,中央値19ヶ月)に群分けし,low-dose群をhistorical controlとしてhigh-dose群の臨床効果,有害事象について検討した。
結果:粗生存率,無増悪生存率ともにhigh-dose群がlow-dose群よりも良好な成績を示したが有意ではなかった。しかし,low-dose群では7例中5例で上顎部分切除術以上の救済手術を必要としたのに対し,high-dose群では部切は1例も施行されなかった(p=0.0138,x2乗検定)。有害事象は差を認めなかった。
結論:上顎洞癌に対して臓器温存を達成するためには総量600mgのシスプラチン動注が必要である。