抄録
1991年から2005年までの15年間に当科で初回治療を行った口腔癌計135部位(118例)につき,臨床的に検討した。亜部位の内訳は舌と口腔底が多く,以下頬粘膜,歯肉,口唇,硬口蓋と続き,病期はStageが上がるほど頻度が高くなっていた。疾患内訳と病期分類の特徴に医学部耳鼻咽喉科と歯学部関連施設との関係が示唆され,情報の共有が望まれた。全身の多重癌や口腔内多発癌が高率に発生しており,口腔癌症例における多重癌の重要性が改めて確認された。手術を中心に加療した結果,5年生存率は舌癌73.8%,口腔底癌58.9%と予後は良好であった。しかし,原発巣に手術を行わず照射で加療した群の成績は不良であり,手術拒否例に対する治療の工夫と,口腔癌の啓蒙により少なくとも手術可能な病期で受診させる努力が重要と考えられた。