抄録
2000年から2008年までに当科で治療を行った上顎洞扁平上皮癌初発症例32例について臨床的検討を行った。内訳は男性23例,女性9例であった。TNM分類はT2:5例,T3:13例,T4a:12例,T4b:2例であった。治療方針として2000年から2003年までは上顎洞試験開洞のうえ可能な限り腫瘍減量術を行い,浅側頭動脈から5-fluorouracil(5-FU)の持続動注を併用の上放射線治療を行った。この時点で腫瘍の残存が認められる症例については拡大手術を施行し,術後には5-FU静脈注射併用の術後放射線療法を行った。2004年以降は,化学療法の変更点として根治手術不能症例を中心に,Seldinger法によるCisplatin(CDDP),Docetaxel(DOC)動注あるいはS-1併用の放射線治療を導入した。全体の疾患特異的3年生存率は68.3%であった。治療開始時期を2003年までに行った前期症例と2004年以降に行った後期症例に分類すると3年生存率で前期62.5%,後期74.6%であった。化学療法の薬剤,投与法の改良が,拡大手術の減少,予後改善に大きく寄与するものと考えられた。