2017 年 43 巻 1 号 p. 68-75
甲状腺扁平上皮癌は非常に稀な疾患である。発症機序に関しては諸説があるが,確定的なものはない。現在まで様々な治療法が報告されてきたが,治療抵抗性であり,有効な治療法は確立されていない。隣接臓器への直接浸潤や遠隔転移をきたしやすく,その予後は極めて不良である。
2000年1月から2012年12月までの13年間に当科で治療を行った甲状腺扁平上皮癌は3例で,甲状腺癌全体の1.1%であった。3例中2例に根治手術が施行され,1例は治療後20ヶ月で原病死したが,1例は遠隔転移を認めるものの,治療後44ヶ月と長期生存が得られている。もう1例は根治手術困難例であり,化学放射線療法を行うも,効果なく,5ヶ月後に原病死した。当科における甲状腺扁平上皮癌症例をまとめ,文献的考察を加え報告する。