抄録
粒子線治療(重粒子線治療・陽子線治療)はX線治療と比較して優れた線量集中性を持つため,安全性が高く,また線量増加による治療効果の向上が期待できる。さらに重粒子線治療は高い生物効果も併せ持ち,線量増加だけでは制御困難な腫瘍に対しても効果が期待できる。2003年以降手術非適応かつX線治療抵抗性の頭頸部腫瘍に対して先進医療として粒子線治療が行われてきたが,2018年4月からは重粒子線治療,陽子線治療ともにこれまで主に対象としてきた頭頸部腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮癌を除く)に保険が適用された。保険適用について診療報酬点数の記述は疾患だけで細かな病態の規定はないが,これまでの先進医療時の治療実績より治療対象とする病態については一定の基準を設けている。この報告では現時点での頭頸部腫瘍に対する粒子線治療の保険適用を詳述し,今後の頭頸部腫瘍に対する放射線治療戦略について展望する。