頭頸部腫瘍
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中咽頭癌症例の検討
摘出標本からみた病理組織と予後
藤吉 達也植山 茂宏吉村 弘之茂木 五郎
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キーワード: 中咽頭癌, 複合療法
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1989 年 15 巻 2 号 p. 129-133

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抄録

昭和56年10月より昭和63年2月までの6年5カ月間に経験した中咽頭癌26例を振り返り, 摘出標本の病理組織とともに予後について検討し, 今後の治療指針の参考とした。
症例の内訳は, 側壁型14例, 上壁型5例, 後壁型1例で, Stage I 2例, II 4例, III 8例, IV 12例, 扁平上皮癌22例, リンパ上皮腫 (未分化癌) 4例であった。治療方法は, 原則として, Stage Iには放射線療法を, またそれ以外には, 5-Fu静注を併用した30Gyの術前照射の後, 腫瘍の en bloc 摘出と再建術を行った。26例中, M1の1例および途中治療拒否1例を除く24例の5年累積生存率は48.8%であった。詳細は, 上壁型100%, 側壁型62.5%, 前壁および後壁型0%で, また Stage I 100% (4年), II 71.4%, III 24.7%, IV 50.6%である。治療失敗例は, 局所再発4例 (うち2例死亡), 頸部再発死2例, 遠隔転移死3例, 他因他病死4例であった。術前治療の組織学的効果は, 原発巣においては, 下里 Grade III, IVが30%を占めていたものの, IIa, IIb群に局所再発例が一致した。
今後, 治療成績向上のためには, 原発巣の切除範囲を再検討するとともに, 手術と併用する照射・化学療法を強化する一方, 他病死の対策にも努める必要性を痛感した。

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© 日本頭頸部癌学会
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