1989 年 15 巻 2 号 p. 134-137
1977年から1986年までの10年間に当科を初診した鼻・副鼻腔癌新鮮症例102例で, そのうち28例が70歳以上であった。高齢者においては Stage IVの進行癌の占める割合が54%と高かった。治療前合併症は28例中18例にみられ, そのために根治切除術を行わなかったものが7症例あった。治療に伴う合併症は8症例にみられたが手術に伴う重篤なものはなかった。28例中上顎部切以上の手術を施行したものは6症例 (21.4%) であり, 70歳未満では90%近い割合なのに比してかなり少なかった。5年累積生存率は15.9%であり, 70歳未満は60.7%であった。今後は高齢者といえども合併症をコントロールした上で積極的に根治切除術を行っていく必要性を痛感した。