1989 年 15 巻 2 号 p. 161-164
上皮筋上皮癌は Donath K. らにより1972年に命名された腫瘍で, 管構造の内, 介在部由来と考えられている。諸家の報告によれば発生頻度は全唾液腺上皮性腫瘍の約0.5%を占め, 女性に多いとされている。今回我々は本腫瘍の一例を経験したので, 文献的考察を加え報告する。症例は61歳の女性。約5年前より左耳下部に腫瘤を自覚する。1987年6月, 当科を受診した。腫瘤は約7.5×6.5cmであった。同年7月7日, 全麻下に耳下腺拡大全摘術を行った。病理組織学的, 免疫組織化学的検索により本腫瘍を上皮筋上皮癌と診断した。術後60Gyの放射線治療を行った。現在, 当科外来にて経過観察中であるが, 再発の徴候を認めていない。