1989 年 15 巻 2 号 p. 84-88
口腔粘膜扁平上皮癌1次症例33例の生検組織における癌組織内浸潤リンパ球亜群を免疫組織学的に検索し, 癌組織内浸潤T細胞の強さと術後臨床経過や予後との関係について検討した。術後5年以内に局所再発をきたした症例は12例で, T細胞浸潤の程度別にみると, 高度T細胞浸潤群 (+++): 14.2% (1/7), 中等度浸潤群 (++): 33.3% (4/12), 軽度あるいはほとんどT細胞浸潤を認めない群 (+, -): 50.0% (7/14) であった。5年確定生存率は (+++): 100%, (++): 80.0%, (+, -): 76.9%とT細胞浸潤の強さは術後経過や予後と関連する傾向を示した。以上の結果から, 癌組織内浸潤T細胞の様相は担癌生体における自己の癌に対する防御機構の生体内表現と考えられた。