頭頸部腫瘍
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下顎再建―形成外科の立場からキメラ型合併組織移植術による下顎再建
光嶋 勲山本 英一細田 超森口 隆彦折田 洋造福田 道夫
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1994 年 20 巻 3 号 p. 453-457

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抄録

“キメラ型遊離合併型組織移植”とは, 独立した栄養血管茎を有する移植片を複数合併し, 各々の独立した栄養血管同志を吻合さすことにより, 移植床側の単一の動静脈源から豊富な血行を受けさせるものである。この概念を組織移植術に応用すれば, これまで再建不能であった広範で深部に及ぶ複雑な複数の組織欠損創が, 血行を有する骨, 筋, 腸管, 皮弁, 関節などを自由に寄せ集めることにより一期的に再建可能である。外側大腿回旋動脈系を軸血管系とするキメラ型合併組織移植は, 軸となる血管系が10cmと長く太く, 軸血管に複数の枝があり, 周辺の各組織が独立した栄養血管を有し, 同一部位から血管付き腸骨を含めた複数の組織を採取できる利点がある。また, 複数な三次元的な再建が容易に可能で, 術中の体位変換も不要である。また, 皮弁採取部が頭頸部から遠位にあるため, 癌切除と同時に移植片の挙上が可能で, 長時間を要する再発または進行した頭頚部癌の治療には最適である。さらに, 神経血管付大腿直筋などを合併移植すれば, 顔面表情筋の動的再建もでき, 今後下顎部の広範で深部に及ぶ欠損創の再建に有用性を増すものと考えられる。

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© 日本頭頸部癌学会
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