1998 年 24 巻 1 号 p. 12-17
乳癌, 大腸癌, 前立腺癌で血管密度が予後因子となり得ることが報告されているが, 頭頸部癌では血管密度と予後との関係について未だ一致した見解を得るに至っていない。そこで, 血管内皮細胞に特異的な抗体JC-70Aを用い, 口腔扁平上皮癌44例について血管密度と臨床病理組織学的因子との関係について検討し, さらに血管内皮増殖因子VEGFとそのレセプター (KDR, Flt-1, Flt-4) の発現の様相についても検討を加えた。その結果, 血管密度は浸潤様式分類の1型で高値を, 4D型で低値を示したが, 頸部リンパ節転移との関連性は認めなかった。VEGFの発現強度は, 頸部リンパ節転移陽性例で有意に高値を示した。また, 頸部リンパ節転移陽性例では全例にFlt-4の発現を認めた。以上の結果より, 口腔扁平上皮癌では血管密度だけでリンパ節転移や予後を予測することは困難であり, 今後, リンパ管の新生を含めた検討が必要であると考えられた。