抄録
舌における紡錘細胞癌の発生頻度は極めて低く, 自験例の4例は全舌癌症例の0.9%を占めるのみであった。2例は舌扁平上皮癌に対する放射線治療の既往があり, これらでは radiation related cancer の可能性が示唆された。生検で紡錘細胞癌と診断されたのは1例のみで, 診断に際しては臨床所見から本腫瘍を考慮した生検が必要である。臨床的には内向型発育を示すものが多いが, 組織学的には紡錘細胞癌の扁平上皮癌成分は浸潤性増殖が著明であった。頸部リンパ節および肺への転移頻度は高く, 扁平上皮癌成分とともに肉腫様成分も多くの転移巣で確認され, 生物学的悪性度は扁平上皮癌に比し高かった。治療の第一選択は外科的切除で, 術後照射も有効と考えられる。