1998 年 24 巻 3 号 p. 408-416
上顎顎欠損症例に対する顎補綴の考え方を製作着手時期の早期化, 製作所要日数の短期化とともに, 腫瘍加療途上のいずれの時点においても組み込み得る顎補綴を行い, '81年から'98年までに340例の上顎顎補綴症例を経験した。うち軟口蓋欠損例は97例あり, 軟口蓋機能に大きく影響を及ぼさないと考えられる軟口蓋前端部欠損の1/4欠損を除いた25例を対象症例とした。プロテーゼの術後製作着手時期とその製作所要日数の検討とともに, アンケートによる会話機能の評価を行った。製作着手時期は, 術後3週以下が7例 (28%) で, 最短着手時間は13日後3例 (12%) であり, 製作所要日数は2-3日が17例 (68%) で, 最短日数は2日13例 (52%) であった。アンケートによるその機能評価は, 他覚的会話能が63%で自覚的会話能は50%であった。プロテーゼは装着され, 患者のQOLの向上に役立っているものと思われた。