1998 年 24 巻 3 号 p. 417-422
根治的頸部郭清術において, 重要となる郭清部位と神経保存のポイントについて述べた。舌癌において重要な領域である耳下腺下極リンパ節の郭清では, 下極の切離線を下顎後静脈と顔面神経下顎縁枝が耳下腺内で交差する高さとした切除を行いたい。胸鎖乳突筋を保存する場合, この筋の上端の裏面, 副神経の外側では環椎横突起を解剖学的指標として確実な郭清を行う。肩甲舌骨筋周囲には舌からの浅いリンパ流があり, 肩甲舌骨筋の外側, 舌骨下部の郭清を十分に行うべきである。
顔面神経下顎縁枝は顎下部を弧状に走行する枝もあり, 麻痺防止にはこの枝の確認保存が重要となる。腕神経叢は肩甲上神経, 長胸神経が単独に走行する場合があり, 近くを併走する鎖骨上神経の切離の際には注意が必要である。郭清下縁のリンパ管の結紮切離では横隔神経, 迷走神経の切断の危険性がある。郭清外側の僧帽筋前縁から内頸静脈に組織を挙上し, 横隔, 迷走神経を側面から確認遊離した後にリンパ管組織を結紮切離することで神経損傷を防止している。