頭頸部腫瘍
Online ISSN : 1883-9878
Print ISSN : 0911-4335
ISSN-L : 0911-4335
下顎骨転移により発見された前立腺癌の1症例
篠崎 剛石川 和宏西野 宏市村 恵一
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 29 巻 1 号 p. 240-245

詳細
抄録

前立腺癌患者は骨転移例が多いことで知られるが, その主な部位は腰椎, 胸椎, 骨盤であり, 頭頸部領域への転移は極めて稀である。今回下顎骨転移から発見された前立腺癌症例を経験したので, その経過について報告する。症例は65歳男性で左耳下部の腫脹, 開口障害を主訴に来院した。耳下部の腫瘤と左上内深頸領域にリンパ節の腫脹を認めた。当初耳下腺腫瘍が疑われたが画像では左下顎枝から関節突起にかけて中心に骨硬化像を伴う腫瘤を認め, 上内深頸領域に腫瘤を2箇所認めた。咽喉頭, 鼻副鼻腔に原発部位を認めなかった。腫瘤に対し開放生検を行った。病理組織は腺癌であった。原発部位の検索で前立腺内に腫瘍を認め, また多発性の骨転移, 腫瘍マーカーの高値から前立腺癌の下顎骨転移と判断した。抗アンドロゲン製剤とLH-RH皮下注射による治療を開始した。原発巣及び耳下部の腫瘤は著明な縮小を認めた。現在腫瘍マーカーは正常化し, 経過良好である。

著者関連情報
© 日本頭頸部癌学会
前の記事
feedback
Top