2004 年 30 巻 1 号 p. 61-66
1982年から2000年までに国立がんセンターで外科的治療を行った頸部食道がん症例74例についてその治療成績と手術の適応について検討した。原発巣の切除術式は, 下咽頭・喉頭全摘出術施行例は35例, 下咽頭・喉頭・食道全摘出術施行例は18例で全体の72%に喉頭摘出を要した。喉頭温存を図った症例の局所制御率は85.7%, 喉頭摘出群の局所制御率は92.5%で両者に有意差は見られなかった。3年, 5年粗生存率は42%,32%であった。原病死42例のうち, 原発巣死が9例, 領域リンパ節死が23例, 遠隔転移死が7例, 術死が3例であった。頸部食道がんは予後不良であり, 特に領域リンパ節死が全死51例の45%を占めていた。今回の検討で喉頭温存が図られ21例のうち局所再発を来したのは3例のみで喉頭摘出群と比べても局所制御率に有意な差はみられなかったことより, 喉頭温存術は症例により積極的に取り入れてよい術式と考えられた。