甲状腺癌手術において反回神経麻痺は可及的に避けねばならない合併症であるが, 時に, 癌の浸潤のために反回神経を犠牲にせざるをえない場合がある。一側の反回神経麻痺は致命的ではないが, 患者の苦痛は深刻である。正常な声帯の可動性が再獲得できないことから, 従来から神経の再建は必要ないとされてきたが, 声帯の萎縮防止と発声時に声帯が緊張するため, 音声は良好である。今回, 反回神経の即時再建を13例に施行した。神経間移植が5例, 頸神経ワナ-反回神経吻合が8例に行われた。声帯の可動性は全例で認められなかった。MPTが9例において正常に, 呼気流量 (VC/MPT) が11例において正常範囲に復帰した。一方で, 非再建群では, MPT, VC/MPTとも正常化したものはなかった。MPT, VC/MPTによる音声機能評価では, 神経の即時再建は有用であると言える。