薬史学雑誌
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明治初期に市販された「喘息煙草」を巡る史的考察
小清水 敏昌
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2020 年 55 巻 2 号 p. 194-202

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抄録

目的:1895(明治 28)年の「喘息煙草説明書」の記載事柄について調査し,また喘息煙草の来歴,使用方法や売薬の制度なども調査した. 方法:国立国会図書館,東京大学医学図書館,たばこと塩の博物館などにおいて関係文献を調査した. 結果:緒方洪庵の息子達(次男:惟準,三男:惟孝)および小林謙三(適塾生)の 3 人が喘息煙草に関与していた.次男は軍医であり喘息煙草を考案し,三男は薬舗主となり「喘息煙草説明書」を作成した.謙三は内務省から許可された喘息煙草を自店で製造販売した. 結論:喘息煙草の材料は印度大麻草であり,初版の日本薬局方から同エキス剤と共に収載.同チンキ剤は第三版から収載された.3 製剤は戦後の第六版日本薬局方で削除されたが,わが国では 66 年間大麻製剤が収載されていた.Cannabis 製剤が約 150 年前の江戸時代から日本で使用されていたことは特筆すべきことである.

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