薬史学雑誌
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昭和期以降の佐渡におけるホソバオケラの状況
西原 正和
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2023 年 58 巻 1 号 p. 10-17

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抄録
目的:ホソバオケラは,生薬蒼朮の基原植物で,日本には江戸時代に渡来し,佐渡においても栽培されており,サドオケラという名前が残っている.しかし現在,佐渡において,植物としての「サドオケラ」だけでなく,その言葉自体を聞いたことがないという者がほとんどで,庭先で先祖が植えたとされる株がそのままの状態で残っており,その植物がホソバオケラということを初めて知るような状況である.そのため,なぜこのような状況に至ったのか,さらに詳細な調査を行うこととした. 方法:過去のホソバオケラに関する書物,文献,報告を再調査するとともに,佐渡の地域史,歴史書物等を調査した.また,これらの調査の中で得られた,佐渡においてホソバオケラを知っていると思われる関係者や現地の漢方生薬取扱薬局への聞き取り調査を,2019 年から 2022 年に行った. 結果:昭和期以降,佐渡におけるホソバオケラは,太平洋戦争中に供出されたことや,その後,増産を行うがホソバオケラの表面に析出したヒネソールやβ-オイデスモールなどの成分の結晶をカビと誤認されて廃棄され失敗に終わったこと,原種圃場の取り組みがうまくいかなかったことなどにより,現在は大規模な栽培が行われていないことを確認した. 結論:佐渡のホソバオケラは,昭和期にも栽培,出荷されていたが,その後の取り組みがうまくいかなかったことから,佐渡内ではその存在を知る者がほとんどおらず,このままでは佐渡内に現存するホソバオケラは消滅する可能性があることが明らかとなった.
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© 2023 日本薬史学会
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