日本健康開発雑誌
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原著論文
銭湯利用と健康指標との関連
早坂 信哉亀田 佐知子野々村 雅之栗原 茂夫
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2019 年 40 巻 p. 22-30

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抄録

背景・目的 一般公衆浴場の銭湯は全国に身近にある公衆を入浴させる施設であり、地域住民にとって銭湯は保健、医療、福祉の面から重要な資源であると考えられる。また、ソーシャルキャピタルという視点からも銭湯の活用は重要である。本研究では「銭湯」について、利用者と非利用者の健康指標ついて調査し、銭湯利用と各健康指標との関連を明らかにすることを目的とした。

方法 インターネットを利用した横断研究を2018年9月に実施した。調査対象者558名(男性281名 (50.4%) 、女性277名 (49.6%))であった。

結果 銭湯の利用頻度の高い人は「主観的幸福感」が非常に高く、 「主観的健康感」でも「(健康状態が)よい」とした人が多かった反面、ストレスを感じる傾向がみられた。地域住民とソーシャルキャピタルについては、銭湯の利用頻度の高い人は「人とのつきあい」が豊かであること、 「地域社会への活動に参加」している傾向があることが示唆された。また、銭湯利用者は様々な設備の利用や気分転換等に銭湯の良さを実感している一方で、銭湯を利用しない人は銭湯に行くのを面倒に感じていることが明らかになった。

考察 銭湯利用頻度の高い人は、ソーシャルキャピタルが豊かで、近隣との付き合いや社会的交流ができており、幸福感や健康状態を良いと感じている。その反面、ストレスを感じる傾向がある。ある程度のストレスを感じつつも銭湯を活用し、むしろ良好な健康状態や高い幸福感が維持できている可能性が考えられた。今回の調査から銭湯がソーシャルキャピタルの豊かな人が集う場になっていることが明らかになり、その人々を中心に、銭湯がソーシャルキャピタルを培養する場となり、地域活性化へとつながっていく可能性がある。そのためには、銭湯利用者の感じている効果を科学的に検証し、地域の保健、医療、福祉にどのように貢献できるかを検討することが今後の課題となる。

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© 2019 日本健康開発財団
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