2024 年 45 巻 p. 63-68
背景・目的 前回、申請者は温水を使用した足湯により瞳孔対光反射のパラメータが変動することを報告した。パラメータの変動パターンからは、副交感神経活動の亢進を示唆する所見であったが、交感神経活動の関与は不明であった。また足湯から生じる心理面・眠気の変化が瞳孔に反映された可能性もある。本研究では、温水による足湯がもたらす心理面・眠気・自律神経活動への効果を瞳孔対光反射と唾液アミラーゼ(sAA)を用いて検証する。
方法 45名の健常成人(平均年齢±標準偏差: 30歳±8)を対象に、気分の問診票(POMS)、カロリンスカ眠気尺度(KSS)、瞳孔対光反射とsAAの測定を行った。その後10分間の温水による足湯を行い、足湯を継続した状態で二つの自律神経機能検査を再度行った。足湯から生じる心理面・眠気・自律神経活動変化とその関連性を探索的因子解析と共分散構造分析を使用して、検証した。
結果 探索的因子分析では、POMSの3つのサブドメインから構成される気分、最大/最小瞳孔径から構成される瞳孔径、最大縮瞳速度/平均縮瞳速度/縮瞳率から構成される瞳孔対光反射の潜在変数に分類できた。共分散構造分析を行ったところ、足湯による瞳孔サイズ・瞳孔対光反射への影響が強く、それ以外の影響は強くなかった。
考察 瞳孔/sAAの変化様式から以下の所見を得た:①足湯による自律神経活動変化は、副交感神経活動亢進による; ②足湯による経皮的な効果が最も強く瞳孔に影響を与えた。