魚類学雑誌
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日本およびその近海産二ベ科魚類の骨格の比較研究I. 頭蓋
谷口 順彦
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1969 年 16 巻 2 号 p. 55-67

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抄録

ニベ科魚類の類縁ならびに分類体系を明らかにするため骨格系統の比較研究を行なった。本報ではニベ科魚類16種の頭蓋骨の形態についての観察結果を記述し, 二・三の考察を行なった. ニベ類の頭骨にみられる著しい特徴は頭部感覚管の発達にともなって生じた額骨および翼耳骨上の骨質隆起である、頭蓋骨において著しく変異のみられる形質は額骨隆起, 前耳骨孔, 後耳骨の位置等であり, これらの形質から判断するとニベ科魚類の頭蓋骨は明瞭に区別される5つの類型, シナオオニベ型, ニベ型, コニベ型, シログチ型およびキングチ型に分けられる。シナオオニベ型にはシナオオニベ属1種・ニベ属2種およびホンニベ属1種が, ニベ型にはニベ属3種が, コニベ型にはコニベ属1種とアブラグチ属1種が, シログチ型にはシログチ属2種およびクログチ属1種が, キングチ型にはキングチ属2種およびカンダリ属2種がそれぞれ含まれる。シナオオニベ型とニベ型は比較的普遍的形質をそなえ, コニベ型とキングチ型は特化形質をそなえている。シログチ型はニベ型とキングチ型との中間的形質をそなえている。耳石にみられる4つの類型 (Chu, 他, 1963)に属す種と頭蓋骨の5つの類型に属す種とを比較すると, それぞれの類型に含まれる種の組成は基本的にはよく類似していることが判明した, したがって, 頭蓋骨および耳石は亜科または属の分類形質として重要と考えられる。

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