魚類学雑誌
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日本産トゲウオ科魚類の鱗板の研究VII.エゾトミヨの稜鱗の発達について
五十嵐 清
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1970 年 17 巻 1 号 p. 45-50

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抄録

エゾトミヨPungitius tymentisは肩部と尾柄部にだけ鱗板のあるsemiarmata型の側線鱗を有し, 鱗板の退行化が著しく, 側隆起線は僅かに枝分れしているだけである.エゾトミヨの鱗板は全長23mmで初めて尾柄部に現われるが, トミヨ属のなかの何れの種よりも鱗板の出現がおそい.全長32mmに成長すると肩部に数個の鱗板が現われるが, 成魚にいたっても未発達のままの痕跡鱗である.鱗板の形成はイバラトミヨ, ムサシトミヨと同様に稚魚の早い時期に止まり, そのまま成熟して幼態成熟となる.鱗板の出現順序や基本的構造はイバラトミヨ, ムサシトミヨと類似しており, これらと系統的に近縁なことが推察できるが, 鱗板の他に背鰭棘の形質などに於て異なり, 樺太, 北海道の限られた分布域で陸封化にともない分化し, エゾトミヨ特有の形態を示すに至ったと思われる.エゾトミヨをイバラトミヨの一亜種とするより, それに近縁な独立種とすることが妥当と考えられる.

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