1973年10月5目の早朝に, 九州天草沖合の通称鰺曽根において, 片手巾着網によって, 約1.8トンのミナミメダイが漁獲された.調査個体は全長488mmの未成魚で, 食道が大きく, 内壁には微細な歯を持つ突起がある.眼は大きく, その周囲には脂肪組織が発達する.背鰭は2っで, 背, 尻鰭の軟条は共に15, 側線鱗は53.この個体は, 1884年に紅海でとれた標本にもとついて本種の記載がなされて以来, 記録された2番目の個体である.この属の魚類は熱帯, 亜熱帯の深海で群を形成していることが知られている.今回, この海域に大量に出現したことは, この時期の水温が平年に比して著しく高かったことに関連があると思われる.