魚類学雑誌
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東部インド洋およびサンゴ海でとれたミズウオの餌料生物
藤田 清服部 仁
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1976 年 23 巻 3 号 p. 133-142

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抄録

東京水産大学研究練習船海鷹丸が1972年12月に東部インド洋で, 1973年1月にサンゴ海でミズウオ58尾を漁獲した。それらの胃内容物を分類し, 種類ごとに出現個体数を調べた。そして, 特に魚類についてすでに報告されている北大西洋, 南東太平洋, 南西太平洋のミズウオの胃内容物と比較した。東部インド洋とサンゴ海のミズウオは軟体動物, 甲殻類, 環形動物, 魚類の4動物群を捕食していた。東部インド洋のミズウオ28尾の胃から178尾の魚類が見られ, 種まで判明したものは31種, 属まで明らかにできたものを含めると37種であった。一方, サンゴ海産のミズウオ7尾の胃から69尾の魚類が得られ, 種まで判明したものは16種, 属まで明らかとなったものを含めると29種類であった。この両海域のミズウオの胃から共通に得られた魚類は5種類であった、北大西洋, 南東太平洋, 南西太平洋産のミズウオは, ミズウオ自身の幼魚も捕食していると報告されているが, この両海域のミズウオにはこの現象が認められなかった。肉食性魚類が普通に捕食していると考えられる六ダカイワシ類は今まで報告されている海域と同様にこの両海域でも餌料生物としては出現していない。捕食されていた魚類のうち, Sternoptyx diaphana, Anoplogaster cornuta, Diplospinus multistriatus の3種類は北大西洋多南東太平洋, 南西太平洋産のミズウオの胃にもみられていることから, これらの魚類は非常に広範囲に分布するものと推定される, 東部インド洋のミズウオが捕食していた魚類は他の海域のそれと較べるとサンゴ海を含む南西太平洋のミズウオが食べていた魚類の組成に最も類似していた.

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