抄録
キンメダイ日ヒウチダイ科魚類Trachichthys australs, Optivus elongatus, Paratrachichthys trailli, P.prosthemius(ハリダシエビス)3属4種の脊椎骨前部側面にみられる板状に肥大した骨, およびそれに関連する特殊化した筋肉, 神経, 標の構造を比較, 検討した.さらにこの科の他の2属2種ヒウチダイ(Hoplostethus mediterraneus), ハシキンメ(Gephy-robery. japonicus)との比較を行った.板状の骨は付着部位からみて, 上肋骨が肥大したものと考えられる.この骨の表面には, 頭蓋骨の後面から発した特別な筋肉が付着する.この筋肉を上肋骨挙筋(levatorepipleuralis)と名づけた.この筋肉は4つの筋節からなり, その数から, 上部体側筋より派生したと考えられる.ハリダシエビス属(Paratrachthys)の2種には, この骨と筋肉に性的二型が認められ, 雄では雌のものより著しく大きい.標は壁の薄い無管鰾で, その前部は膨出して, 肥大した上肋骨の内面に付着するが, 頭蓋骨との直接の関連はない.
前記4種での特化した器官の解剖学的特徴は, この目のイットウダイ科や, 他の目の魚類での発音器官として特化したものの特徴と類似する, このことか嘱これらの器官は, 発音機能と関連して特化したものと考えられる.
この科の他2属ヒウチダイ属, ハシキンメ属には, これらの特化した器官は認められない.したがって, この科内で前記の3属は1っの系統幹をなし, 他の2属は独自の系統幹をなすと考えられる.