魚類学雑誌
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両側回遊に伴うイトヨの甲状腺の組織変化
本間 義治塩田 清二吉江 紀失
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1977 年 24 巻 1 号 p. 17-25

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抄録

イトヨの生活史の各段階における, 甲状腺の組織傷にみられる変化から, その役割を知る目的で, 観察を進めた。甲状腺の活動は, 海または塩水湖 (加茂湖) 中で機能低下状態にあり, 遡河初期にもっとも高い。産卵場の親魚では蕩費像がみられ, 経産魚では退行変化が著しい.産卵場付近で得た稚魚は, 比較的穏やかな状態を示すが, これら稚魚を海水槽に移すと, 甲状肪は不活性化する。一方, 会津盆地産陸封型イトヨを産卵期から秋までにわたって調べたところ, 成魚・稚魚共に穏やかな像が得られた。降海型イトヨの稚魚を, 降海期以降も長く淡水槽中で飼育を続けると, 顕著な甲状腺腫が発生した。すなわち, 腺上皮の著しい肥厚と増殖および血管系の発達を伴い, コロイドは欠失状態を呈する。この腫瘍発生の原因について, 考察を試みた.

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