釧路沖320~430mの深みからえびけた網によって採集されたスズキ科Percichthyidae, クシスミクイウオ属 (新称) Howellaに属する1個体の魚類を調査した.
本個体は鰓蓋諸骨に多くの複雑な棘を有すること, 側線鱗数および横列鱗数が著しく多いこと, 擬鰓が少ないこと, 鋤骨と口蓋骨に歯がないこと, 櫛鱗の棘が不規則に2列に並ぶこと, 鰓紀の前後面に1列の微少棘を有すること, 鱗が脱落しにくいことなどの特徴を持つ。上記の特徴および体節的形質の一致性から本個体はFedoryako (1976) によって記載されたH.parini;に同定された。本種は鰓蓋諸骨に鋭い櫛状の棘をもつことから, 新和名「クシスミクイウオ」を提唱した.
種はハワイの北西海域からの2個体に基づいて記載され, それ以後報告されていない.従って, 本個体はこの種の第3番目のものであり, また, 日本からの本種の初記録である.
上野・久保田 (1970) によって駿河湾から報告されたトゲスミクイウオHowella simplexはBathysphyranops属に移された。従って, トゲスミクイウオ属はBathysphyraenops属に対して使用される.