魚類学雑誌
Online ISSN : 1884-7374
Print ISSN : 0021-5090
ISSN-L : 0021-5090
サメ類の研究-XIV.マレーシア, ペラック河で採集されたTelok Anson sharkの生殖生態
手島 和之Mukhtar Ahmad水江 一弘
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 25 巻 3 号 p. 181-189

詳細
抄録

インドネシアおよびマレーシアの河川, 湖沼およびマラッカ海峡に棲息しているTeldk Anson shark, Scoliodon laticaudus (Müller et Henle) を採集し, 雌雄の生殖生態について調査を行った。本種は周年生殖を行っている.本種の雄は精巣, 貯精嚢, 交接器の状態より全長約330mmで成熟に達すると推定される。卵母細胞は単層の卵胞上皮でおおわれている。熟卵は小さく, 排卵時で直径約1mmである.受精卵はゼラチン状の胞でおおわれ, 片方に鞭毛状の動毛をもち, 子宮に下降後, 子宮下部腹側に動毛束で着床しそこに胎盤が形成される.胎盤胎児部には妊娠の初期より卵黄は存在していない。胎児部組織内には毛細血管が良く発達している.臍帯には動静脈のみで卵黄腸管はない.胎児は妊娠の初期から栄養を母体より供給される.また, 臍帯は多くの付枝をもち, その上皮は子宮内液より栄養を吸収する。雌の成熟体長は全長325~350mmと推定される.

著者関連情報
© 日本魚類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top