魚類学雑誌
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原始的真骨類における若干の構造の進化と類縁関係
William A. Gosline
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1980 年 27 巻 1 号 p. 1-28

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抄録

原始的真骨類の類縁関係を探索するため, 尾部骨格, 鰾と耳域の関係を文献に基づき検討し, また解剖により次の3点を論じた。すなわち (1) オステオグロツスム目魚類の後擬鎖骨postcleithrumは祖先型より受け継いだanocleithrumである。他の真骨類は鱗起源とみられるもう2個の後擬鎖骨を保持していることがある。ハダカイワシ目のヒメ科Aulopusは種々の原始的真骨類と同様3個の後擬鎖骨を保持しているようであるが, より進歩した型の魚では最高2個までである。 (2) 胸鰭の運動と関連した構造系の進化において, 一連の大きな変化が二つほど起こっているようである。その一つは胸鰭の最前端鰭条と関係があり, これで全骨類型祖先と原始的真骨類と区別できる。もう一つはハダカイワシ目と高等な真骨類における中烏口骨mesocoracoidの喪失と関連した一連の変化である. (3) 原始的真骨類において進化をとげた前上顎骨の種々な型の運動のうち, 二つの方法が顎の伸出法として広く適用されている.Aulopusによって代表される型は, 殆どの高等な棘鰭条類において, 強く咬むための支えを伸出した前上顎骨に提供している.殆どの高等な真骨類において, 上顎骨の基部の上方に伸びる強大な口蓋骨の突起が存在し, 上顎骨は口裂から排除されている, 第二の伸出法としてはコイ目にみられる型が成功している.これは口部による吸引摂餌法と関係している.重要なことは, 口角をめぐる唇状構造に起因する, 前上顎骨の後端での前下方向への引力であるように思われる.
類縁関係に関する結論を述べると以下のようになる.カライワシ目, サケ目, ニシン目, ネズミギス目, コイ目, ナマズ目魚類は一連の関連群を形成しており, 一方ではオステオグロッスム目, 他方ではハダカイワシ目―棘鰭条類と明確に区別される.カライワシ目は上記関連群の中で最も早期に枝分かれした魚類である.ニシン目, ネズミギス目, コイ目, ナマズ目はハダカイワシ目一棘鰭条類と同様に原始的真骨類のもととなる型 (ここではサケ目と考える) から異った方向に進化したと思われる.これらのサケ目派出群のうち, ネズミギス目とコイ目, ナマズ目が最も近縁であるように思われる.

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