福岡市近郊の津屋崎の岩礁地帯で, ウミタナゴの交尾生態を潜水観察した.津屋崎におけるウミタナゴの交尾期は9月初旬から12月初旬の約3カ月で, この間1才以上の大型雄は, 水深05~5.0mの岩礁で, 直径5~10mのなわばりを作る.なわばりに雌が現われると, 雄は体色が黒ずむとともに, 体側と尾柄に白色斑が現われ, 長時間にわたり求愛を行った後, 雌を追尾する.1才以下の小型雄では, なわばり行動は不明瞭であるが, 大型雄と同様の求愛と追尾が見られる.交尾は雄が追尾の後, 雌の前方で体を曲げて雌を誘い, 雌雄が相寄って短時間生殖口周辺を密着させて行われる.前交尾行動は交尾期間中毎回観察されたが, 交尾の頻度は低く, 1977~1979年の調査期間を通じて3回しか観察できなかった, さらに, 本研究では卵巣の組織標本を作製し, 卵巣内に精子の出現する時期と交尾期との関係について検討した.