魚類学雑誌
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成熟ならびに妊娠との関係からみたウミタナゴ胸腺の周年変化
田村 栄光本間 義治北村 裕
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1981 年 28 巻 3 号 p. 295-303

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抄録

佐渡産ウミタナゴの胎仔, 幼魚, 成魚多数を材料として, 胸腺活動を成熟ならびに妊娠期間との関係を考慮しながら組織学的に観察した.雄は8月に成熟し, 交尾を始めるが, 雌では成熟卵が11月に出現し, 翌年1月に1.5mmの胚が発育し, 6月に産出する.雌雄とも親魚の胸腺は6月に最も肥厚し, その後回復するが, 10.月には再び少し肥厚する.妊娠初期の1~2月には, 雌親魚の胸腺が一時著しく肥厚し, 明瞭な性差を示すが, 胎仔のそれは未分化状態にある.胎仔胸腺は3月頃 (体長10mm) から分化し始め, 4月に完成する.一方, この頃の雌親魚の胸腺は再び萎縮していたが, 出産期には親魚・胎仔共に急速に肥厚する.しかし, 産出後の仔魚胸腺は退縮を始める.このような母体と胎仔の胸腺肥厚の関係からみると, 妊娠期間の胸腺活動は3期に区分され, その理由は今後の解析をまたねばならない.

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