アメマスの生殖腺の性分化過程を組織学的に調べた.性的未分化期の生殖腺は少数で大型の生殖細胞とそれを取り囲む体細胞より構成されている.卵巣及び精巣への分化はふ化後131日目に形態的に明らかになった.初期の卵巣の分化は, 卵原細胞の減数分裂前期の卵母細胞への移行と多くの体細胞よりなる組織が腸間膜に面する側に出現することにより明らかとなった.痕跡的な卵巣腔が卵巣の先端部に限り形成された.他方, 初期の精巣の分化は, 生殖腺の基部に2・3の管腔が形成されることにより明らかとなった.その後, 生殖細胞と体細胞は徐々に増加するものの, 精子形成はふ化後250日においても認められなかった.アメマスの性分化過程は他のサケ科魚類のものと本質的に一致した.