魚類学雑誌
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ハナカジカCottus nozawaeの生殖行動
後藤 晃
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1982 年 28 巻 4 号 p. 453-457

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抄録

小川に設置されたガラス水槽中で, ハナカジカCottus nozawaeの求愛行動, 産卵行動及び雄の保護行動が観察された.
水槽に導入された数尾の成熟雌と雄のうち, 最も体色の黒い雄が石の下のシェルターを占有した.シェルター内の雄は, 雌がシェルターの入口に近づいた時, この雌に向かって突進し, すぐにシェルターにもどった.この雄の動作に対して, 雌は逃げ去るか, または雄に続いてシェルターに入るかのいずれかの反応を示した.そして, 雌がシェルターに入った場合には一連の産卵行動が継続した.
番を形成した雄と雌は, 正位の姿勢で寄り添い, シェルター内で数回輪を描くように回転した.数分後, 雄は逆位になり, 石の下面に沿って這うような行動をとった.まもなく, 雌も逆位になり, 雄は頭部を雌の頭部に重ね, 胴部を雌の胴部に沿って横たえ, 密着させた.雄と雌が口を開け, 激しく体を震わせた時, 雌は多数の卵を一度に放出し, その後ゆっくりと放卵した.
産卵後, 先ず雄が正位にもどり, 次に雌も正常の姿勢にもどった.まもなく, 雌は雄による突きあるいは喰みつきによって, 産卵巣から逃げ去った.一方, 雄は産着卵とともに産卵巣に留まり, 約2週間後から胸鰭によるファンニング行動を始め, 艀化時まで続けた.
このような生殖行動をハナカジカ属の他種のそれと比較した結果, 基本的な行動パターンは互いに類似するが, 幾つかの細部の行動には違いが認められた.

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