魚類学雑誌
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イットウダイ属の学名の検討
松浦 啓一清水 長
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1982 年 29 巻 1 号 p. 93-94

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抄録

Woods and Sonoda (1973) の論文が発表されてから, イットウダイ属の学名にはAdioryxが, 用いられるようになった.しかし, 以下の理由で, AdioryxSargocentronのシノニムとなる.
Fowler (1904) は, Holocentrus属をHolocentms亜属とSargocentron亜属に2分し, 後者の模式種にH.leo (=spinifer) を指定した.Starks (1908) は, H.suborbitalisH.ascensionisが, 鰾と頭蓋骨の結合関係によって識別されることを示し, 前者に対してAdioryx属を提唱した.
Woods (1955) は, 大西洋のHolocentrus属の再検討を行い, 本属にFlammeo亜属, Sargocentron亜属, Adioryx亜属, そしてHolocentrus亜属の4亜属を認めた.その後, Woods (1965) は, Adioryxを属に昇格させ, Woods and Sonoda (1973) は, FlammeoHolocentrusも属へ昇格させた.しかし, 彼らは, なぜかSargocentronには全く言及していない.
一方, Nelson (1955) は, 多くのイットウダイ科魚類の標と頭蓋骨の関係を調べ, Holocentrus rufusを除くと, 従来Holocentrus属に置かれていた種には差が見られないことを示した.そしてStarksの分類に従えば, これらの種は, Adioryx属へまとめるべきだとした.言いかえれば, spinifersuborbitalisの間にも, この形質における差はないということである.また, 外部形態においても, Sargocentronの模式種spiniferAdioryxの模式種suborbitalisを別属に分けるほどの差は認められない.Sargocentronは1904年に発表され, Adioryxは1908年に出版されているので, 前者に先取権があり, Adioryxは, Sargocentronのシノニムとなる.

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© 日本魚類学会
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