1983 年 29 巻 4 号 p. 421-428
イザリウオ科のハナオコゼ及びイザリウオの呼吸に及ぼす呼吸水の流速と低溶存酸素量の影響について流水式呼吸室を用いて調べた。酸素消費量はポーラログラフ酸素電極により測定された魚の呼吸前後の水の溶存酸素量の差から, また呼吸頻度は肉眼により呼吸運動に伴う鰓蓋の開閉数から求めた.流速が増加した場合, 両種はともに酸素消費量の増加を示さなかったが, 呼吸水からの酸素除去率は減少した。また, 呼吸頻度はイザリウオでは増加し, ハナオコゼでは増加しなかった。これらの相違はハナオコゼが流れ藻に, イザリウオが藻場の底部に生活する習性の相違に基づくものと思われる。次に呼吸水の溶存酸素量が低下した場合, 両種の酸素除去率及び呼吸頻度はともに増加したが, 酸素消費量はイザリウオでは増加したが, ハナオコゼでは変化しなかった。これらは低酸素状態においてハナオコゼでは酸素消費量が一定に保たれ, イザリウオでは酸素除去率の増加と呼吸頻度の上昇により酸素消費量が増加するという補償作用の存在を示唆するものと思われる.