魚類学雑誌
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ヌタウナギの季節的移動と生殖腺の周年変化
常木 和日子大氏 正己斉藤 博
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1983 年 29 巻 4 号 p. 429-440

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抄録

目本海西部に位置する隠岐諸島の道後の加茂湾付近で, 年間にわたり各月1回ずつヌタウナギの採集を行った。10月下旬より翌7月下旬までは深さ約20mの湾内で採集できたが, 8月と9月は湾内では採集できなかった.しかし8月下旬と10月上旬には湾外の深さ約50mの地点で採集された.卵巣の相対重量および卵径は8月下旬から10月上旬の問で著しい減少を示した.一方, 10月上旬に採集された雌の卵巣には放卵後の大きな濾胞がみられた.これらの事実から, ヌタウナギの産卵はおそらく9月, 遅くとも10月の第1週に, しかも湾外で行われることが推定される、一方, 精巣の相対重量には顕著な周年変化はみられなかった。繁殖期直前の8月下旬に採集された雄の精巣は主に精原細胞からなる濾胞でできており, 精子はほとんどみられなかった.これらの事実は, 繁殖に参加する雄は採集されなかったことを示している.雄の平均全長は50.8cm, 雌のそれは48.9cmであり, 統計的に有意な差があった.

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