1983 年 30 巻 1 号 p. 10-14
インドネシアのKai諸島付近の水深352mからカジカ科クシカジカ属に含まれる1新種Stlengis mesembrinusが採集された.本種は, 側線鱗教が29-30であること, 背側に9枚の小鱗からなる鱗列を持つこと, 目が大きいこと, 背鰭が8棘13軟条からなり, 臀鰭が10軟条からなること, そして背鰭の斑紋などの特徴で, 本属のいずれの既知種とも識別される.
本種は熱帯海域から採集された初めてのカシ刀科焦類であるため, 日本産のクシカジカ属魚類およびタスマニア海に分布するカジカ科魚類Antipodocottusと比較検討された.また, Antipodocottusの分散経路に関するBolin (1952) の見解についても検討され, 本種の起源について考察が加えられた.