魚類学雑誌
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オイカワ稚魚における脊椎骨異常の出現
駒田 格知
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1983 年 30 巻 2 号 p. 150-157

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抄録

オイカワの稚魚期における脊椎骨異常の発現状況および発現機序について検討した.揖川産オイカワ稚魚 (標準体長8.0~33.0mm) における脊椎骨異常の発現頻度は, 矢作川や土岐川産稚魚よりも明らかに高かった.この場合の揖斐川産稚魚における主要な異常は, カルシウム塩の異常沈着物によって2個又は3個の椎体が連結されている異常椎体であり, 椎体の螺旋状縫合の約7倍, 短縮椎体の約14倍の出現頻度であった.全脊椎骨を通じて, カルシウム塩の異常沈着物が認められた稚魚は, 4, 564尾の揖斐川産稚魚 (体長8.0~19.0mm) 中273尾 (5.98%) であり, このうち171尾 (62.6%) でこの異常沈着物が2個の椎体の側面に共通的に付着し両者を連結し, 13尾 (4.8%) では3個の椎体を連結していた.この時, 個々の椎体の間隙は明瞭であった.このような異常連結椎体は体長8.0~19.0mmの時期にのみ認められ, それ以後は明瞭なゆ合椎体を呈していた.しかし, これらの椎体の表面は滑らかではなく, 神経棘や血管棘の発育も非常に悪かった.また, 体長19.0mm~25.0mmの稚魚におけるゆ合椎体の発現頻度および発現位置は, 体長8.0~19.0mm稚魚におけるカルシウム塩異常沈着物によって連結された異常椎体のそれらと同じであった.以上の結果から, オイカワ稚魚期における椎体側面でのカルシウム塩の異常沈着による椎体の連結がゆ合椎体の発現誘因の一つであることが示唆された.この型の異常椎体の発現頻度は河川によって異なっていた.

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