魚類学雑誌
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透過型電子顕微鏡によるニジマス稚魚の細菌性鯉病に関する研究
工藤 重治木村 紀彦
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1983 年 30 巻 3 号 p. 247-260

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抄録

細菌性鯉病の初期病巣は超微形態学的には二次鯉弁の肥厚によって始まる.その上皮細胞は立方または円柱状, 塩類細胞は円形または卵円形である。しかし, 粘液細胞の形は識別できるほどの変化はない。これらの細胞間には大食細胞や好中球の浸潤がみられる。また, 上皮細胞, 塩類細胞および粘液細胞の自由表面では形質膜の小胞化がよくみられる.二次鯉弁の表面には球状の突出物がしばしば現われるが, これはプラークに相当するものと思われる.これは肥大した上皮細胞や塩類細胞の細胞質が変性し, 最終的には周縁の細胞質と核のみが扁平状に残り, しかもその変性した細胞質は大食細胞によって貧食され, 内部が空胞 (液胞) 状に膨化して出来たものである.これらの球状体の形成には1~ 数個の細胞が関与している.
病巣の進んだところ, すなわち過形成の部位では二次鯉弁や鯉弁の癒合, 上皮細胞の分裂像, 病巣内部に閉じ込められて変性しつつある上皮細胞や塩類細胞の周縁細胞質の除去, 游走細胞の浸潤および柱細胞の形態学的変化がみられる.

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© 日本魚類学会
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