魚類学雑誌
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ニシン卵粘着物質の電顕的観察
太田 博巳
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1984 年 30 巻 4 号 p. 404-411

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抄録

ニシン卵は強い粘着性を示す。この粘性物質の起源と排卵された卵の卵膜中での所在部位を明らかにする目的で, 排卵前後の卵濾胞および排卵された卵の卵膜を電顕的に観察した。
排卵前の濾胞の顆粒膜細胞中には, メチレンブルーに濃染され, 種々の電子密度を示す直径2μm以下の顆粒が多数存在した.また, この顆粒は卵門細胞とその周囲の顆粒膜細胞には存在しなかった.これに対して排卵後の濾胞の顆粒膜細胞では顆粒が消失しており, 卵門部位を除く卵膜表面に電子密度の高い薄層が新たに認められ, この薄層は強い粘性を示した.また, 卵門部位の卵膜表面には粘着物質を欠き, これとは異なる物質が観察された。
以上の観察結果より, ニシン卵の粘着物質は, 排卵前濾胞の卵門域を除く顆粒膜細胞中に存在する顆粒に起源し, その顆粒は排卵直前に卵膜表面に分泌されることが明らかとなった。

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