多くの形態形質値の分布が重なり, 体側腹部の小黒斑の性状に種々の中間型がみられるマサバとゴマサバについて, アイソザイム遺伝子を標識にして遺伝的分化の程度を調べた.その結果, 遺伝子座のうち, αGpd-B, Idh-A, Ldh-A, Sod, Hem-1及びHem-2の6遺伝子座において完全な遺伝的分岐が認められた.これらの遺伝子座において, 中間型はマサバまたはゴマサバの何れかと同じ組成を示した.さらに遺伝的距離は中間型を含めてグループ内で平均0.006, グループ間では0.414となった.以上のことから, マサバとゴマサバはそれぞれ独立種とするのが妥当であると結論された.遺伝的に分けた2種の形態形質を比較したところ, 種的な形質と環境によって変化する形質とに分けられた.したがって, 分類形質の検討にもアイソザイムマーカーが極めて有効であると考えられた.