妊娠後期のヨシキリザメの子宮内壁の微細構造を観察検討した結果, 次のことが明らかとなつた.子宮内壁上皮は2層の細胞からなっていた.上層の上皮細胞の細胞間隙は極めて拡張しており, 多数のミトコンドリアが細胞質の基底部から側部にかけて分布していた.下層の上皮細胞は著しく扁平化していた.上皮中に粘液細胞が並ぶ部分がわずかに見られたが, その他の部分には粘液細胞は少数しか認められなかった.また上皮細胞には分泌像が認められなかった.上皮下の毛細血管の内皮は薄く, 上皮に密着していた。これらの形態は上皮を通じての水分・電解質の輸送およびガス交換に有利なものと考えられる。以上のことからヨシキリザメの子宮内壁は胎仔の栄養物質の分泌よりもむしろ子宮内液の浸透圧調節および母体-胎仔間のガス交換に関与しているものと推察された.