魚類学雑誌
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ミヤコタナゴの卵発生と仔魚の発育ならびに仔魚の表皮上突起
鈴木 伸洋岡 彬菅生 裕山川 勝彦日比谷 京
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1986 年 33 巻 3 号 p. 225-231

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抄録

ミヤコタナゴの卵発生と前期仔魚期の発育について経時的に観察し併せて, これらの仔魚の表皮上に存在する突起の形態も観察した.22℃の飼育下では受精後約52時間から孵化を開始し, 浮上期に達するのにほぼ19日を要した。この期間の卵発生ならびに仔魚の発育形態はヤリタナゴとアブラボテのそれに類似した。本種の仔魚は, 孵化直後にすでに尾部仔魚膜鰭 (鰭褶) がやや発達していること, 孵化後数時間には仔魚が動き始めること, 卵黄嚢背面が上方へ低く隆起して1対の丘状突起を形成することならびに卵黄嚢および体の中央部の表皮上には高さ約15-25μmの斜円錐状の鱗状突起を卵黄嚢後部および鰭褶の表皮上には高さ約5-10μmの半球状の小突起をそれぞれ備えている.これらはヤリタナゴおよびアブラボテの仔魚にも共通してみられる系統発生上重要な形質である.しかし, 本種はヤリタナゴとアブラボテに比べて卵発生ならびに仔魚の発育経過が速やかであることや, 卵黄嚢の前部および体の前部の表皮上には高さ5-10μm程度の半球状の小突起が多数存在することで両種と区別された。以上のことから, これら3種は近縁な関係にあるものと考えられるが, ミヤコタナゴは両種よりもやや特化しているものと判断された.

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