著者等は, マダラの測定及び解剖中に, 尿管の下端部が膨張し嚢状構造を呈していることを見出した.形態学的観察並びに嚢状部内液の定量分析結果より, この嚢状構造は膀胱と考えられた.膀胱は, 左右一対の尿管がその後端部で融合して形成される正中部の嚢状構造とここから突出する左右一対の嚢状構造により構成される.マダラの膀胱の上皮細胞は, 他の動物のものと異なり, その自由表面に形成される微絨毛, 細胞質上部に密に分布する多撒の小胞とミトコンドリアにより特徴付けられる.これらの細胞学的特徴から, マダラの膀胱上皮細胞は活発に吸収活動を行っていたことが考えられ, このため, マダラの膀胱は尿から水を再吸収し, 浸透圧調節に寄与している可能性が示唆された.船上で凍結して持ち帰った膀胱内液から, 尿の代表的成分である65-213μg/dlのアンモニア-Nと1.5-3.5mg/dlの尿素一Nが検出された.