1987 年 33 巻 4 号 p. 417-418
相模湾におけるオニハダカ属魚類の生活史を調査中, 19, 000個体を越える本属魚類の標本中に1個体のクロオニハダカCyclothone obscura Brauer 1902 (体長33.7mm, 未成魚) が含まれていることが明らかになった.本種は典型的な周赤道分布を示す深層種として知られ, 今回の記録は太平洋におけるこれまでの北限 (23°N, ハワイ沖) より緯度で10度以上上回る.過去に1000m以深の採集が少ないため, 今回の記録からは本種が日本周辺海域で繁殖しているか, あるいは他の海域から無効回遊してきたものかは不明である.本種は発光器をもたないことで他のオニハダカ属魚類と容易に識別できる.