ハリヨの鱗板数を中心とした形態に関して6つの水域の地理的変異を調査した.鱗板数, 最大体長, 体長-体高関係及び体長-頭長関係, 背鰭及び臀鰭軟条数などにおいて, 揖斐川水系型と琵琶湖水系型とに区分することができた.特に, 尾柄部にも鱗板 (竜尾骨) があるのは殆んど琵琶湖水系産であり, これは体形がより流線型をなしていた.鯉細数の変異については何らの傾向もみられず, これは生息水域の環境条件の相異を反映し, 食性の差によると思われる.
また, 揖斐川水系と琵琶湖水系との形態的相異は, 各水域ごとの捕食者や水温などとの関係によるよりも, 陸封化過程に伴うネオテニーの進行度とより関連があるかもしれない.